BLゲーム ウウウルトラC(ウルC)雲雀野夜美×鞘師十郎 ネタバレ感想
ウルC終了しました。
第三話感想の前に総評を…。
各話とも話の大筋や迎える結末は一緒ですが、視点が違うというだけでかなり厚みのあるシナリオ構成だったと思います。
第三話は特にぶっとびカプで、エロ含め型にハマらない破天荒さを感じましたね。
まさにウルトラCだわー。
タイトルに帰結したよ。
とにかく色んな要素がこれでもか!と詰め込まれていて、プレイ前に想像してたまさに『おもちゃ箱』というイメージでした。
そして本作のテーマでもある正義と悪。言葉としては対になるのでしょうが、プレイしてみるとどちらも同じ意味にも受け取れる。
主人公たちの視点によっても然り。特に正義から悪へ、悪から正義へと変化するところは本当に面白かった。
そして前作から感じていた、世界観の演出や発想力がすごい。加えて文章表現のセンスが本当に素晴らしいと思いました。
逆に、ここはもうちょいどうにかならなかったのかな?という点。
すみませんが、ズバリ書かせていただきます。
ゲーム中から与えられる情報の多さに加え、表現が曖昧だったり結構重要なコトもサラっと簡潔に通り過ぎてしまい、理解できずにエンディングを迎えてしまうことがありました。
怪獣と対峙してる絵についても、ここは全体のどの部分を描いているのだろう、どんな姿勢なんだろう?というものがあって理解できない時もあり…。
何度もプレイしてみて「こういうことなのかな?」と、ある程度自分の中で消化して進めていかないと見えてこない部分があり、ここがプレイしている身としてはキツかったです。
第一話の感想の中でも記載しましたが、副読本欲しいですね。というか、副読本なくてもスッキリ終えたいのが本音なのですが…。
このへんは、深く考察するのが好きな人には向いているかもしれない。
ただ第三話まで終えれば話は繋がってきます。更に今は公式HPでQ&Aが公開されていますので、そこまで見るとおおよそは理解できるのではないかと思います。
ほかシステムとしては、CG鑑賞やシーン回想はありませんので、お気に入りはこまめにセーブした方がいいですね。
テキスト自動送り、既読スキップ、メッセージ表示速度、ボイス・音量調整などの基本設定はあり。画面はフルか通常の2択。
今はよくあるバッグログでそのシーンまで飛べる機能とかはありませんので、システムに関しては普通といったところ。
それでも商業ソフトと比べると価格も4,500円+税と手を出しやすいですし、これまでにあまりないタイプのゲームなので、気になっているならプレイしてみて欲しいです。
このあとは第三話の感想です。
かなりの長文です。
以下ネタバレしてるので、ご注意ください。
第三話『ダスクマン』
まず三話をひとことで表すと。
ぶっ飛びすぎてて凄かった。
第一話で、夜美が人間ではなく、地球を侵略しに来た異星人であることが明かされています。目的は全ての生物をしもべに変え、住みやすい環境に整えること。
夜美が地球を侵略しに来た際、地球の青く美しい姿に一目ぼれ。滅ぼすことを躊躇い、通販で買った増幅装置を使い地球を2つに分けます。
1つは手つかずの状態で残し、もう1つは侵略する用。
ところがここで宇宙船が故障し墜落。怪我を負ってしまいますが、無傷だった自身の腕を切り離し分身を生み出します。
このとき、十郎のオトン・真一が船の墜落に気づき夜美を助けに来ている。
夜美が回復して目覚めるまでの間、分身に自分を守れと命令して眠りにつきますが、目覚めたとき分身は真一を愛し、女性の姿に扮していました。
その分身と真一の間に出来た子供が十郎です。
この事実を知った時、ペン吉はビビりました。
そして。
各話では、最強ヒーローの名を語るに相応しい十郎ですが…。
ヒーローのイカロス役なんてみんなの憧れじゃん?正ちゃんだって、十郎を見て自分もイカロスになりたいって思ったわけだし。
ドラマの主人公なんて人気者なんだから、それは華々しい生活を送っているかと思ったら、なんかものすごく暗いんだけど…。
まず家の中が昼間でも仄暗い。雪が降ってるので冬だから…というのもあるんでしょうが。
この欠落感はなんだろうと思えるほどに寂しい家だった。そしてなにより十郎自身から漂う虚しさが尋常ではない。
みんなが愛するのは仮面をつけた十郎であって、素の自分を好きになってくれる人は誰もいないのだと思って育ってきている。
両親は夜美によって殺されてしまっているし、叔父夫婦も失踪したまま。自分の傍にいるのは夜美だけだったんですよね。
夜美が両親を殺したことを黙っているかわりに、この家にずっと住んで、自分の帰りを待っていて欲しいと告げている。逃げたら君の足を折るとも…。
なんだヤンデレかよと思ったら、十郎自身が夜美の血を半分引いてるので、こうなるのはごく当たり前のことなんだろなと後から納得しました。
というか、オトンがイカロスやっていたから必然的に親の役を受け継ぐ形になってしまい、本人の意思とは関係なくヒーロー役を演じ続けなくてはならなかったようです。
それでもイカロスを続けていたのは、夜美が怪獣を倒せと言ったから。ヒーローを演じ、怪獣を退治することで夜美の目を自分に向けさせたかったんだろうなー。
一番「コレ辛れぇぇー!」ってなったのは、かつてのイカロス仲間・五郎八の想い人、のぞみとの関係ですね。なんと十郎の婚約者というポジションだった。
彼女はもともと路上で歌っていた流しですが、十郎との縁で今をときめくアイドル歌手になっている。
五郎八は過去白いイカロスに殺されてしまっていますが、彼からのぞみのことを託されていたため、十郎は彼女を守るために婚約者となっていたようです。
のぞみは怪獣であったため、抑制効果のあるイカロスの体液を使い彼女が変身してしまわないよう定期的に体を繋げていたんですよ。
しかも、夜美自身が2人の仲を取り持つように働きかけている事実がまたキツイ。
夜美は十郎の気持ちが自分にあることを承知の上で、2人がこの先一緒になれるよう行動している。
異星人の自分は星へ帰ってしまうけど、寂しがり屋な十郎の傍に生涯共にいてくれる人…というか、そうならざるを得ない人を選んでいるのが夜美らしい。
というか、十郎の婚約者にするために、白いイカロスに五郎八を殺れと命令したのかな。ここまでいくと、のぞみを怪獣にしたのも最初から計画の内だったのかなと思えてくる。
考えすぎかね?
ただし。
極限まで達した人の感情が及ぼす影響までは、考えていなかったんじゃないだろうか。
これが夜美の誤算だったように思う。
子供の頃からやりたくないイカロスを演じ続け、あげくのぞみと半ば義務のような行為。十郎の意思と実際の行動が著しく乖離しているのが1番キツかったわ。
そりゃ十郎だって限界だろうよ。
夜美が自分の星に帰ることを受け入れられず、片っ端から怪獣や変身前の人間を殺していくシーンは、まさにヒーローから悪役へ転じている印象的なシーンだった。
そしてこれが自分の本質だと気づく場面は、最初十郎に感じた『虚しさ』が完全に昇華したようにも見えた。
怪獣の人権を尊重する『オレンジ』という団体。夜美は最初からイカロスの悪役を担わせるつもりで作った組織なんでしょう。
のぞみのコンサートでは大規模な怪獣騒動を起こし、大勢の観客の前でイカロスの活躍ぶりを目の当たりにさせているし。
これらは、イカロスはこの世界に必要だと思わせるためのものだよね??
かつて夜美の分身が真一に力を与え、怪獣退治という茶番劇を繰り返していたけど、結局彼も分身と同じ道を辿っている。
本当は頑張れば1日で地球を侵略できたのに、そうしなかったのは全て十郎のためなわけで。
この十郎のためというのが、果たして一体どんな感情からきているものなのか。ここだけがどうにもわからない。
それともうひとつ。
すぐに侵略しなかった理由は、夜美の性格にも起因しているんじゃないだろうか。
地球にやって来たとき、この星の青に強く惹かれた夜美。自身の知らないことや感銘したものに対して、探求心がかなり強い方なのかな?と感じた。
第2話では死んでしまった史郎を簡単に生き返らせてしまうシーンがあるけど、夜美はものすごい高等生物だと思うんですよ。
そんな彼が、自分の知らない世界や文化に触れることが、なにより楽しいと感じてい部分がある。
例えば料理を作ること。ほか様々なバイトを経験したり。知らない言葉に興味を示したり…そういうの。
異星人ってもともと無機質だというイメージですが、夜美のような個体だったからこそ、分身と同じく人間という存在に興味を持ったんじゃないかと思えてしまうのです。
ちょっとここまで考察絡めた堅い話になってしまいましたが、ここらでこのカプの話へ方向転換しようと思います。
三話始まってから、十郎からものすごい矢印が夜美に向かっているのがわかるんですが。最初の方で一緒にお風呂のシーンとかね。
もういきなりおっぱじまるのとかとワクワクしていたら、夜美がサラーっとかわして出て行ってしまう。
いくら公式から十郎が受けですよとアナウンスがあっても、見た目も雰囲気も本人ですら完全に攻めにきてます。
しかし。
より強いものが雄役を担う…。
どちらが上か優劣を決めようじゃないかとマウント合戦が始まるんですけど…。いくら2世と言えど、能力では夜美に敵うはずもなく。
それでも夜美に自分を愛して欲しいと、望みの薄い戦いに挑んだ先にあったのは想像を絶する情交シーンだった。
もはやエロいだとか、カワイイとかそういうの一切ナシ。
いくらイカロスのスーツを身に纏っているとは言え、四肢がちぎれるのは絵的にかなり衝撃的だったわー。
次元を超えた『戦い』という名のセックスに新境地を見たね、ペン吉は…。
圧倒的なチカラの差を見せつけられるも、どうしても夜美を諦めきれない十郎。それでも夜美と一つになりたいと自ら彼の上にまたがる。
「君のものにしてくれ」
「君に愛されたい」
自ら腰を落として夜美を受け入れる。
これは…やばい。
どんな難題ふっかけられようと、それが例え叶えられないものだったとしても。夜美と共にいられるなら何だって受け入れる十郎。
が、しかしですね。
ここで十郎が初めて、自分の愛が一方的で都合のいいものだったと気づているんですよ。
どうして彼が自分を受け入れてくれないのか。もとい、受け入ることができなかったのか。
それをこの壮絶なセックスで知るって。
もう2度言うけど、この発想がホントすごい(白目)
この2人には異星人と人間という大きな隔たりがある。
クリア後に見たオマケで、異星人の寿命が果てしなく長いということがわかった。十郎が寿命を迎えた後は、夜美は独りになってしまう。
夜美曰く。
自分がその時どんな感情になるのかわからない。
それを、恐ろしいと思ってしまうのです。
知らないことが怖い。これまでの夜美なら知らないことは知りたいから、自分から積極的に知ろうとしていたよね。
でも十郎と過ごして人間の感情を知ってしまった。分身が真一を愛したように、夜美も十郎を愛してしまった。
愛する人がいなくなる辛さは経験してみなければわからないけど、賢い彼のことだから検討はつくでしょう。だからこそ十郎を受け入れなかったんだから。
エンディングを迎えたあと、ほかのカプには後日談があった。でもこの三話にはない。なので公式サイトに掲載されている後日談を読んでみたのですが。
この後日談まで読んで初めて完結する話なのではないかと感じました。第三話まで終えたけど、まだ読んでないよっていう方は是非サイトへ足を運んでみて欲しいです。
幸せになれるので。
さすがCool-Bでも特集組まなかっただけあって、ここのルートは色んなアレコレが判明して楽しかったですね。
その中のいくつかをピックアップしてみた。
1.羽蘭ちゃんがイカロスだった
怪獣が吐き出した液体を被ってしまい緊急を要してのイカロス化でしたが、これには驚きましたね。
イカロスの血を分けてもらうと、目の色が灰色になるの初めて気づいた。
十郎が力を与えてイカロスとなった仲間たち。定期的に行われているヒーロー会議で集う彼等の素顔があまりに強烈だった。
みんながくだらない話をしてるシーンでは思わず笑ったよ。イカロスとは言え、やはり中身は人間なのである。
人としてそれはどうなの?と思うこともあるけれど、それぞれに秘めたヒーローとしての資質は本物だった。
世界が平和になり人々が安心して暮らせるなら、彼らはどんな困難にも立ち向かっていくことでしょう!
2.サクラは狐塚君の妹だった
第一話でサクラは妹の生まれ変わりだと言っていたけど、これ本当のことだったんだね。最初は普通に狐塚君の思い込みだろと思ってました。
サクラと洋館に住んでた婆ちゃん怪獣の能力が「死んだ命を蘇らせる」で、ここで全て繋がりました。
第一話の終わりに、元の世界で生きてたサクラが「正ちゃんさん」と言っている。
正ちゃんさんと呼ぶのは怪獣のサクラだけなので、怪獣世界の記憶を有していることから同一人物だということになる。
3.『太陽の柱』と犬のタロウについて
大阪にある『太陽の塔』、その制作者である岡本太郎がベースになっているのは、プレイした方ならすぐに気づいたかと思います。
ゲームの中では、元の世界と怪獣やイカロスが存在する世界の2つを繋ぐ役割を果たしている。
十郎が言うには「12年前に突然現れた」と言っているので、元の世界で完成させたものなのかな??地球が複製された時になかったものを、どうやって同期させたんだろ。博士の力?
夜美が自分の星に帰るためには、博士(正太郎のオトン)が作った鉄人を動かす必要があった。
元の世界で生きてる博士をおびき出すため正太郎を囮に使うのですが、博士は知り合いだった太郎と協力して息子を元の世界に連れて帰ろうとしていたんだね。
しかしこちらの世界のタロウは、夜美によって粘土の犬に変身させられ記憶も奪われている。
叔父の太郎は十郎に怪獣退治を強要していかなったことから、彼がイカロスになりたくないことを察していたんでしょう。
十郎が主人公として本当に望んでいたドラマとは、セリフも持たないエキストラとして、ただ静かに夜美と過ごすことだった。
あと犬のタロウには詩人になりたいとも言っていたよね。
でも結果として、夜美も十郎も自分の願いだけを相手に押し付けていただけで、本心は最後の最後でしか明かされていない。
ある意味、ここもベルちゃんと史郎と同じ不器用カプだわ。
それと公式掲載の後日談『光の点綴』で、元の世界に十郎は存在していないことが夜美から語られている。
侵略するため2つに分けた地球だけど、結局はこちらの世界を滅ぼすことなく帰ろうとしていた。
夜美にとっては、十郎が存在するこちらの世界も守りたかったのかな…というのが、私の解釈です。
最後に
ウルCの感想、難産だった。
どの感想記事もできるだけ正しい情報のもとで作成しているつもりですが、何度もシーンの確認をしているので時間かかりました。
しかも今作は自分の予想で書いている部分もかなりあります。もしかしたら作者側の思惑とは違った解釈になっているかもしれません。
感想を作る上で気をつけているのは、ゲームを通して作者が何を伝えたいのか。
ここを可能な限り理解した上で個人的に思ったことを綴りたいので、適当にプレイはできない性分。
ウルCは噛めば噛むほど味がでる、いわゆるスルメゲームですね。
恐らく多くのプレイヤーさんが2周目をしてるんじゃないか…と思うのです。
2周目にして気づくことがたくさんあったのではないでしょうか。私はまさにコレだった。
それだけ多くの情報が各主人公たちの視点でばら撒かれているので、非常に中身の濃いシナリオで楽しめました。
※ゲーム画像の著作権はADELTAにあります。